2020年10月4日日曜日

お手軽・廉価な高倍率マクロ撮影台の作成例

 

簡単に作れる高倍率対応のマクロ撮影台

廉価な市販品の組み合わせで実用レベルの撮影台(水平タイプ)ができたので作り方のメモ。
使った感じ、5倍くらいまでなら問題なく対応可能です。

方針

■可能な限り安く
■工作スキルゼロでも作成可能
■軽量・コンパクトで持ち歩きも可能
■カメラの固定、1軸の確実な微動が最優先
■カメラ側の微動は廉価な機材では難しいので被写体側を動かす
■不便な部分は割り切って使う

用意するもの

・カメラ
・レンズ
・ラボジャッキ 2個
   →安物で十分。片方は底の滑り止めを剥がしておく。
・Z形雲台
   →1本関節の多いM型のものでも。安物で十分だが関節は固く締めておくこと
・X軸ステージ
   →なるべく細かい単位で動かせるものを(0.01mmくらいで動かせると安心)。
・滑り止めシート
・3M コマンドタブ
   →しっかり固定できてきれいに剥がせるのでオススメ
・厚めの定規
・下に敷く板
  →机や床の傷防止。直接設置する場合は不要。
・養生テープ

セッティング方法

①カメラをZ型雲台に取り付け設置する。Z形雲台は動かないようコマンドタブで固定する。
②1つ目のラボジャッキの天板に滑り止めシートを貼り、レンズを下から支えるように設置する。
③2つ目のラボジャッキの底の滑り止めを剥がし、コマンドタブで天板にX軸ステージを固定する。
④X軸ステージの上に被写体を固定する。
   ※必要に応じ、ステージ面に小さな板等を貼って台にすると良いと思います。

使用方法

①以下の方法で1枚目の位置合わせを行う
・高さ方向の調整を2つ目ラボジャッキの動作で行う。
・奥行き方向、横の方向調整は2つ目のラボジャッキを細かく滑らせて行う。
   このとき、別の軸が動かないよう厚めの定規を当ててガイドにする。
   ※市販のマクロフォーカシングレールでの粗動も試したのですが、廉価品は精度がイマイチなためこの方法のほうが楽でした
②位置が決まったら2つ目のラボジャッキが動かないよう養生テープで固定する。
③一枚撮影したらX軸ステージで微動…を繰り返し必要な枚数を撮影する。

課題

・像面と微動の方向を垂直にするのは難しいため、撮影枚数が増えると被写体の位置がズレる。
    →多少のズレはフォーカススタッキングソフトがなんとかしてくれるはず…
・最初の位置合わせが面倒。
    →慣れればわりと素早くできるようになるはず…

2019年9月16日月曜日

高倍率マクロ撮影の失敗パターン -- 撮影中の被写体ずれ

クロケシツブチョッキリ
高倍率のマクロ撮影を行う際、一番大変な作業は何か。
機材の固定、ライティング、構図決め、最初の一枚の位置合わせ、機材の微動、等々。

人によって違うとは思うけど、私が一番苦労するのは
「被写体を撮影台にマウントする」作業。
被写体が小さいので、どうしても手先の器用さが要求される。
不器用な私は、毎回指先をプルプルさせながら必死に作業することになる。

また、被写体のサイズによっては固定方法が大きな問題になる。
何かしらの土台に被写体をくっつける方法があるのだが、
下手な方法だと固定器具ががっつり写真に写りこんでしまう。

私は、極細の昆虫針の先端に木工用ボンドを少量付け、
被写体の写真に写らない部分に貼り付けるという方法をとっている。

が、実はこの方法には大きな欠点が。
接着位置が端のほうになる都合上、
固定が不十分だと撮影中に被写体が自重で傾いてくることがあるのだ。

高倍率の撮影では何十枚~何百枚の写真を合成するので、
撮影にはけっこう時間がかかる。
途中で被写体がずれてしまうと、深度合成ができなくなってしまうのでその時点で撮影は失敗となる。

上の写真は、撮影の失敗例。
68枚撮影した時点で被写体がずれてしまったので撮影が強制終了。
眼まではなんとか撮ることができたが、特徴的な口吻は完全にボケてしまっている。
被写体は、クヌギの葉上を歩いていた体長3mmほどのクロケシツブチョッキリ。
※虫の種類はTwitterで教えていただきました

撮影情報:
Pentax K-70
Lomo 8x  microscope objective
ISO 200
Exposure time 1/125

2019年8月13日火曜日

スグリゾウムシ 2019/08/12撮影

スグリゾウムシ

Lomoの4.7x対物レンズのテスト撮影。
古いレンズだがよく写る。
開口数は0.11と倍率の割にやや控えめなので、非常に扱いやすい。
注意すべきは鏡筒長。
古い有限補正光学系の対物レンズは大抵160mmだが、この4.7xは190mm。

被写体は暖かい季節になるとたくさん現れるスグリゾウムシ。
「スグリ」という名前ではあるものの、スグリ科の植物だけでなく幅広い草木を餌にしている。

どこにでもいる普通種だが、体長5mmほどであまり動かないので、
意識して見ていないとあまり目につくことはないかもしれない。
また、体色も地味な茶系。
一見、あまり魅力のある虫ではないようにも思える。

しかしながらこの虫、実はなかなか面白い特性を持っている。
それは繁殖方法。
基本的に、メスだけの単為生殖で増えるのだ。

あと、ぱっと見は地味なこの体色もよく見てみるとなかなか興味深い。
身体は細かい鱗片で覆われ、拡大してみるとまるで爬虫類のような質感。
また、強い光を浴びせると構造色によってわずかに虹色に輝く。
コロンとした体形につぶらな瞳もとても可愛らしい。

深度合成:102枚

機材情報:
Pentax K-70
Lomo 4.7x  microscope objective
ISO 200
Exposure time 1/160

2019年7月30日火曜日

ササラゾウムシ属 2019/07/28撮影


「ささら」の名の通り毛深くて白黒のゾウムシ。
「ささら」というのは中華鍋とかを洗う道具。竹を束ねたフサフサのやつ。

面白い外見なのに、あまり話題に上がることのないササラゾウムシの仲間。
決して珍しい虫ではないのだが、小さいうえに葉っぱの裏にいることが多いので目にする機会はあまり多くない。
見つけたら見つけたでちょっとした拍子に擬死状態になってポロっと落ちてしまうし、
ゾウムシにしてはよく飛ぶので、飛び去ってしまうこともしばしば。

8倍の対物レンズで撮影して細部をよく見てみると、体毛の生え方が面白いことに気付く。
黒の毛がわりとまばらなのに対し、白い毛は密集している。
何のためにこんな作りになっているのか。

深度合成:107枚

機材情報:
Pentax K-70
Lomo 8x  microscope objective
ISO 100
Exposure time 1/60

2019年7月22日月曜日

アワダチソウグンバイ(リベンジ編) 2019/07/21撮影

アワダチソウグンバイ

前回のアワダチソウグンバイの撮影は、
撮影に向いていない対物レンズ Lomo 10x 0.30 NA APO
を使ったことで散々な結果になってしまった。

新たな有限補正光学系の対物レンズ Lomo 8x 0.20 NA を入手したので、
アワダチソウグンバイの撮影に再挑戦。
深度合成:145枚

結果は成功。こっちは普通に良く写る。
見た目はそっくりなレンズで、高級なのはむしろ 10x APO のほう。
それなのにこの結果の差。
対物レンズの世界はつくづく恐ろしい。

このアワダチソウグンバイだが、
家の塀の横に一本だけ生えているセイタカアワダチソウについていたもの。
この株にはたくさんのアワダチソウグンバイが住み着いている。
晴れているときは葉の表側、雨が降れば葉の裏で過ごしている。
付近の空き地とかにもセイタカアワダチソウは何本か生えているのに、
なぜかこの株だけが集中攻撃されている。
虫の考えることはよくわからない。

グンバイムシの仲間は、虫に詳しい人か
園芸や農業をやっている人でないと特に気にしないであろうマイナーな虫だが、
その造形はとても美しい。

レースのような翅もさることながら、全体のフォルムも格好良くデザインされたメカのよう。
ちょっとでも乱暴に扱えばすぐにバラバラに砕けてしまう脆さもあわせ、
まるで精密機械のような印象を受ける。

高倍率で撮影することによってより魅力を引き出せる虫なので、
今後も積極的に撮影していきたい。

機材情報:
Pentax K-70
Lomo 8x  microscope objective
ISO 100
Exposure time 1/60

2019年7月17日水曜日

高倍率マクロ撮影のレンズ選び

左から
・顕微鏡対物レンズ Lomo 3.7x 0.11 
・特殊マクロレンズ Lomo Mikroplanar 65mm F4.5
・引き伸ばしレンズ Rodenstock Rogonar-S 60mm F4.5
・逆付け用広角レンズ Super-Multi-Coated TAKUMAR 28mm F3.5
・市販の高倍率マクロレンズ Laowa 60mm F2.8 ※揺蚊(@Raita_zuiko)さんからの借り物
普通に売っているマクロレンズの多くは、最大撮影倍率が等倍。
 ※等倍 ⇒ センサーサイズと被写体のサイズが一致する状態。
    フルサイズ機であれば横幅約36mmのものが画面いっぱいに写る。
    APS-Cであれば横幅約23.4mm、マイクロフォーサーズであれば横幅約17.3mm

等倍を超えての撮影は、ちょっと特別な機材が必要になる。

代表的な機材とそれぞれの特徴について、簡単にまとめる。


①市販の高倍率マクロレンズ

正攻法、ただし選択肢は少なめ

前述の通り市販のマクロレンズの大半は等倍止まりだが、
CanonのMP-E 65mm F2.8 や Laowa のマクロレンズ各種など、
等倍を超えた撮影に対応したものもいくつかある。

このタイプのレンズには、大きく分けて以下の2種類が存在する。


タイプ1. 無限遠~2倍程度の撮影に対応するもの

ちょっとした風景写真やスナップから等倍越えマクロまで撮れる便利なレンズ。
万人にオススメ。
     - Laowa 60mm F2.8
     - Laowa 100mm F2.8 等

タイプ2. 接写専用で5倍ほどの高倍率撮影に対応するもの

遠くが撮れないため扱いづらいが、その分高倍率撮影が可能なレンズ。
ある程度マクロ撮影に慣れて、レンズ以外の機器も揃った状態でないと使いこなすのは難しい。
     - Canon MP-E 65mm F2.8 (1-5x)
     - Laowa 25mm F2.8 (2.5-5x)
     - 中一光学 FREEWALKER 20mm F2 (4-4.5x)

利点

 ・ カメラへのマウントが楽、自分のカメラに対応するものを買ってポン付けするだけ
 ・ 作例が豊富
 ・ メーカーのサポートを受けることができる
 ・ 性能が保証されていて、細かいことを気にする必要がない
     ※設計外の倍率で撮影して性能ガタ落ち、といった事態が発生しない
 ・ タイプ1のものは非常に扱いやすい

欠点

 ・ 安価ではない
 ・ タイプ2のものは使いこなすのが難しい
 ・ 選択肢があまり多くない
 ・ レンズのサイズが大きいものが多いので照明に制限がかかる場合あり

②引き伸ばしレンズ

特殊レンズの中では最も扱いやすい万能選手

引き伸ばし機に使うレンズを撮影用に流用する方法。
これ以降に挙げる方法と比較して癖がなく扱いやすい。
特に2倍くらいまでの比較的低倍率域では抜群の使いやすさ。
ただ、通常のレンズではないので注意点も多少はある。

カメラへのマウント方法
多くの引き伸ばしレンズはリア部分がM39(L39)マウント。
ネジマウントの中では比較的ポピュラーなので扱いは楽。
M42あたりに変換してやると良い。
ただし、古いレンズには変なマウントのものもあるので注意すること。

レンズによっては逆さに取り付けた方が実力を発揮できるものもある。
その場合は、フィルター径に応じたリバースアダプタを使用と良い。
また、ピント合わせ用の機構は無いので
必要に応じベローズやヘリコイドリングと併用する。

焦点距離の選び方
高倍率を出したい場合は焦点距離が短めのもの、
倍率はそれほど必要なくワーキングディスタンスを重視する場合は
焦点距離が長めのものを選ぶのが基本。
焦点距離が長いレンズで無理やり倍率を稼ごうとすると、
光路長が長くなり扱いづらい。

焦点距離が短めのレンズを選ぶと無限遠が出なくなる場合があるが、
あまり気にしない方が良い。

利点

 ・ 安価(高性能なものはそれなりに高価)
 ・ 性能が安定していて、どれを選んでもそこそこ良く写る
 ・ 撮影倍率の変化に比較的寛容、遠景から接写まで無理なく使える

欠点

 ・ 逆光性能が低いものが多い
 ・ 物によっては絞り値読み取り用の採光窓を塞ぐ等の工夫が必要になる
 ・ あまり高倍率になると光路長が伸びるので使いづらい

 ③広角~標準レンズの逆付け

初期投資いらず、奇策だが高性能

通常の撮影に使うレンズをひっくり返して逆さにマウントする方法。
逆付けのためには、フィルター枠にリバースアダプタというものを取り付ける。
フィルター径変換のため、ステップアップリング/ステップダウンリング
を用意すると良い。

一見トチ狂った方法だが結構高性能。
ただし、基本的に接写専用となるのでやや扱いづらい。

レンズの選び方
レンズのマウント部ではなくフィルタースレッドを使うので、
マウントの種類は気にしなくてよい。
注意点は絞りリングのあるものを選ぶこと。
絞りが手で動かせないものを選んでしまうと、常に開放で使うことになる。

焦点距離については、高倍率を出す場合は広角、
2倍くらいまででいいなら標準レンズを選ぶ
ただし、極端な広角は上手くいかない場合があるので、
広角側は28mmくらいまでにしておくのが無難。
単焦点でなくズームレンズを使うと、倍率が調整できる。
また、倍率の微調整はエクステンションチューブを使うと便利。

利点

 ・ あり合わせの機材を流用したりジャンクレンズを使ったりできるので初期投資いらず
 ・ 意外にもかなり高性能

欠点

 ・ 後玉を汚したり傷つけてしまったりする可能性がある
 ・ 撮影倍率の幅が狭いためやや扱いづらい

④特殊マクロレンズ

マニアックな機材、入手性が悪く癖が強い

昔各社で生産していた、特殊な用途のマクロレンズを使用する方法。
流通量が少なく入手が困難。
高性能ではあるのだが、扱いづらいものが多くあまりお勧めできない。
完全に趣味の世界。

利点

 ・ ハマれば高性能な場合がある
 ・ イメージサークルが大きいものが多い

欠点

 ・ 流通量が非常に少なくあまり手に入らない
 ・ マウント部が特殊である場合が多く、カメラへの取り付けにも一苦労
 ・ 設計倍率から外れると性能がガタ落ちする場合が多い

⑤顕微鏡対物レンズ

倍率&解像力と引き換えにその他全てを捨て去る特化型の機材

顕微鏡の対物レンズを直接カメラにマウントする方法。
高倍率を出しやすく解像力が非常に高いが、それ以外は欠点だらけ。
特に「絞りがない」という点が致命的で、
被写界深度が薄すぎるため微動装置を用意して深度合成することが必須となる。
そのため、撮影台や照明がきちんと用意できていない場合、
まず使いこなすことができない。

スペックの見方やカメラへのマウントやセッティング等、
特殊な知識がいろいろと必要になるので、
詳細は本記事ではなく個別の記事にまとめる。

利点

 ・ 通常の方法では難しい高倍率の撮影が可能
 ・ ハマれば最高の解像力を発揮
 ・ レンズが小さいので照明がやりやすい
 ・ 高倍率の撮影でも光路長が長くなりすぎない

欠点

 ・ いろいろと覚えなければならないことが多い
 ・ 撮影に向くレンズ、向かないレンズがあり、高価なものでも使い物にならない場合あり
     ※カメラで使うと色収差が激しい、イメージサークルが足りていない等 
 ・ 基本的にワーキングディスタンスが短い
 ・ 設計倍率から外れると大幅に性能が低下する
 ・ 基本的に絞りがないため、被写界深度が極薄
     ※微動装置の分解能を下回ってしまうと深度合成が上手くいかない
 ・ 3倍くらいまでの比較的低倍率域では利点が少ない


2019年7月15日月曜日

シソの発芽 2019/07/15撮影

シソの発芽

発芽直後のシソの種を撮影。
32枚を深度合成。

発芽の観察は面白い。
小さな種から非常に精巧なつくりの芽が生えてくる様はとても神秘的。
シソの種は2mmに満たない程度のサイズだが、どこにこんなものが収納されているのか。
日に日に成長していく姿も見ていて飽きない。

機材情報:
Pentax K-70
Lomo 3,7x microscope objective
ISO 200
Exposure time 1/60