|
左から
・顕微鏡対物レンズ Lomo 3.7x 0.11
・特殊マクロレンズ Lomo Mikroplanar 65mm F4.5
・引き伸ばしレンズ Rodenstock Rogonar-S 60mm F4.5
・逆付け用広角レンズ Super-Multi-Coated TAKUMAR 28mm F3.5
|
普通に売っているマクロレンズの多くは、最大撮影倍率が等倍。
※等倍 ⇒ センサーサイズと被写体のサイズが一致する状態。
フルサイズ機であれば横幅約36mmのものが画面いっぱいに写る。
APS-Cであれば横幅約23.4mm、マイクロフォーサーズであれば横幅約17.3mm
等倍を超えての撮影は、ちょっと特別な機材が必要になる。
代表的な機材とそれぞれの特徴について、簡単にまとめる。
①市販の高倍率マクロレンズ
正攻法、ただし選択肢は少なめ
前述の通り市販のマクロレンズの大半は等倍止まりだが、
CanonのMP-E 65mm F2.8 や Laowa のマクロレンズ各種など、
等倍を超えた撮影に対応したものもいくつかある。
このタイプのレンズには、大きく分けて以下の2種類が存在する。
タイプ1. 無限遠~2倍程度の撮影に対応するもの
ちょっとした風景写真やスナップから等倍越えマクロまで撮れる便利なレンズ。
万人にオススメ。
- Laowa 60mm F2.8
- Laowa 100mm F2.8 等
タイプ2. 接写専用で5倍ほどの高倍率撮影に対応するもの
遠くが撮れないため扱いづらいが、その分高倍率撮影が可能なレンズ。
ある程度マクロ撮影に慣れて、レンズ以外の機器も揃った状態でないと使いこなすのは難しい。
- Canon MP-E 65mm F2.8 (1-5x)
- Laowa 25mm F2.8 (2.5-5x)
- 中一光学 FREEWALKER 20mm F2 (4-4.5x)
利点
・ カメラへのマウントが楽、自分のカメラに対応するものを買ってポン付けするだけ
・ 作例が豊富
・ メーカーのサポートを受けることができる
・ 性能が保証されていて、細かいことを気にする必要がない
※設計外の倍率で撮影して性能ガタ落ち、といった事態が発生しない
・ タイプ1のものは非常に扱いやすい
欠点
・ 安価ではない
・ タイプ2のものは使いこなすのが難しい
・ 選択肢があまり多くない
・ レンズのサイズが大きいものが多いので照明に制限がかかる場合あり
②引き伸ばしレンズ
特殊レンズの中では最も扱いやすい万能選手
引き伸ばし機に使うレンズを撮影用に流用する方法。
これ以降に挙げる方法と比較して癖がなく扱いやすい。
特に2倍くらいまでの比較的低倍率域では抜群の使いやすさ。
ただ、通常のレンズではないので注意点も多少はある。
カメラへのマウント方法
多くの引き伸ばしレンズはリア部分がM39(L39)マウント。
ネジマウントの中では比較的ポピュラーなので扱いは楽。
M42あたりに変換してやると良い。
ただし、古いレンズには変なマウントのものもあるので注意すること。
レンズによっては逆さに取り付けた方が実力を発揮できるものもある。
その場合は、フィルター径に応じたリバースアダプタを使用と良い。
また、ピント合わせ用の機構は無いので
必要に応じベローズやヘリコイドリングと併用する。
焦点距離の選び方
高倍率を出したい場合は焦点距離が短めのもの、
倍率はそれほど必要なくワーキングディスタンスを重視する場合は
焦点距離が長めのものを選ぶのが基本。
焦点距離が長いレンズで無理やり倍率を稼ごうとすると、
光路長が長くなり扱いづらい。
焦点距離が短めのレンズを選ぶと無限遠が出なくなる場合があるが、
あまり気にしない方が良い。
利点
・ 安価(高性能なものはそれなりに高価)
・ 性能が安定していて、どれを選んでもそこそこ良く写る
・ 撮影倍率の変化に比較的寛容、遠景から接写まで無理なく使える
欠点
・ 逆光性能が低いものが多い
・ 物によっては絞り値読み取り用の採光窓を塞ぐ等の工夫が必要になる
・ あまり高倍率になると光路長が伸びるので使いづらい
③広角~標準レンズの逆付け
初期投資いらず、奇策だが高性能
通常の撮影に使うレンズをひっくり返して逆さにマウントする方法。
逆付けのためには、フィルター枠にリバースアダプタというものを取り付ける。
フィルター径変換のため、ステップアップリング/ステップダウンリング
を用意すると良い。
一見トチ狂った方法だが結構高性能。
ただし、基本的に接写専用となるのでやや扱いづらい。
レンズの選び方
レンズのマウント部ではなくフィルタースレッドを使うので、
マウントの種類は気にしなくてよい。
注意点は絞りリングのあるものを選ぶこと。
絞りが手で動かせないものを選んでしまうと、常に開放で使うことになる。
焦点距離については、高倍率を出す場合は広角、
2倍くらいまででいいなら標準レンズを選ぶ
ただし、極端な広角は上手くいかない場合があるので、
広角側は28mmくらいまでにしておくのが無難。
単焦点でなくズームレンズを使うと、倍率が調整できる。
また、倍率の微調整はエクステンションチューブを使うと便利。
利点
・ あり合わせの機材を流用したりジャンクレンズを使ったりできるので初期投資いらず
・ 意外にもかなり高性能
欠点
・ 後玉を汚したり傷つけてしまったりする可能性がある
・ 撮影倍率の幅が狭いためやや扱いづらい
④特殊マクロレンズ
マニアックな機材、入手性が悪く癖が強い
昔各社で生産していた、特殊な用途のマクロレンズを使用する方法。
流通量が少なく入手が困難。
高性能ではあるのだが、扱いづらいものが多くあまりお勧めできない。
完全に趣味の世界。
利点
・ ハマれば高性能な場合がある
・ イメージサークルが大きいものが多い
欠点
・ 流通量が非常に少なくあまり手に入らない
・ マウント部が特殊である場合が多く、カメラへの取り付けにも一苦労
・ 設計倍率から外れると性能がガタ落ちする場合が多い
⑤顕微鏡対物レンズ
倍率&解像力と引き換えにその他全てを捨て去る特化型の機材
顕微鏡の対物レンズを直接カメラにマウントする方法。
高倍率を出しやすく解像力が非常に高いが、それ以外は欠点だらけ。
特に「絞りがない」という点が致命的で、
被写界深度が薄すぎるため微動装置を用意して深度合成することが必須となる。
そのため、撮影台や照明がきちんと用意できていない場合、
まず使いこなすことができない。
スペックの見方やカメラへのマウントやセッティング等、
特殊な知識がいろいろと必要になるので、
詳細は本記事ではなく個別の記事にまとめる。
利点
・ 通常の方法では難しい高倍率の撮影が可能
・ ハマれば最高の解像力を発揮
・ レンズが小さいので照明がやりやすい
・ 高倍率の撮影でも光路長が長くなりすぎない
欠点
・ いろいろと覚えなければならないことが多い
・ 撮影に向くレンズ、向かないレンズがあり、高価なものでも使い物にならない場合あり
※カメラで使うと色収差が激しい、イメージサークルが足りていない等
・ 基本的にワーキングディスタンスが短い
・ 設計倍率から外れると大幅に性能が低下する
・ 基本的に絞りがないため、被写界深度が極薄
※微動装置の分解能を下回ってしまうと深度合成が上手くいかない
・ 3倍くらいまでの比較的低倍率域では利点が少ない