概要図 |
①有限補正光学系と無限遠補正光学系
顕微鏡対物レンズの表記のうち、スラッシュで区切られた部分の1つめ確認する。160/0.17 、160/0、210/- のように数字であれば有限補正光学系。
∞/- のように∞であれば無限遠補正光学系。
有限補正光学系であればベローズやエクステンションチューブだけで使うことができるが、
無限遠補正光学系は別途結像のためのレンズが必要。
このメモでは有限補正光学系のみを対象とする。
②鏡筒長(きょうとうちょう)
①で確認した数字が鏡筒長。単位はmm。
対物レンズをカメラに取り付けるときは、
フランジバック長 + ベローズ・エクステンションチューブの長さ = 鏡筒長表記-10mm
とするのが基本。
この関係が成り立つとき、撮影倍率はレンズに表記されたものとなり、
レンズのパフォーマンスが最も発揮される状態となる。
※フランジバック長は使っているカメラにより異なるので調べる必要あり
2020/9/29 間違いを指摘していただいたため式を修正しました
これより左辺を大きくすると撮影倍率が上がり小さくすると撮影倍率が下がる。
このことを利用し撮影倍率の調整が可能だが、基準倍率から大きく外れると画質が悪化するのでほどほどに。
撮影倍率を上げるとイメージサークルが大きくなるので、
イメージサークルが小さすぎるレンズを使う際は多少撮影倍率を上げてフォローする必要がある場合も。
これより左辺を大きくすると撮影倍率が上がり小さくすると撮影倍率が下がる。
このことを利用し撮影倍率の調整が可能だが、基準倍率から大きく外れると画質が悪化するのでほどほどに。
撮影倍率を上げるとイメージサークルが大きくなるので、
イメージサークルが小さすぎるレンズを使う際は多少撮影倍率を上げてフォローする必要がある場合も。
③倍率
4x、10xといった表記がそのレンズの基準倍率。
これが大きければ大きいほど被写体を大きく写せるが、
その分撮影環境のセッティングがシビアになる。
※ブレに極端に弱くなる、ワーキングディスタンス(後述)が短くなる、被写界深度が浅くなる等
撮影設備によっぽど自信があるのでなければ、10倍くらいまでにしておくのが無難。
④開口数(NA)
倍率の横にある0.11、0.25といった数値がこれ。
カメラのレンズで言うところのF値。
ただし、F値とは逆で数字が大きくなるほど開口が大きくなる。
基本的に大きければ大きいほど解像力が上がるが、
その分被写界深度が浅くなるので扱いづらくなる。
⑤被写界深度の落とし穴
③、④に関連する事項。
いくら被写界深度が浅くなったって、深度合成するんだから問題ない…
と思いきや大変な問題が。
あまりに被写界深度が浅くなるようなレンズを使うと、
「被写界深度が撮影時の微動装置の分解能を下回る」という事象が普通に起こりうる。
簡単に言うと、
「0.01mm単位で動かす装置を使っているのに被写界深度が0.005mmしかない」
という状態。
こうなってしまうと、深度合成しても鮮明な画像を得ることはできない。
倍率、開口数の上げすぎには要注意。
⑥ワーキングディスタンス(WD)
レンズの先っぽから被写体までの距離。
短すぎるとライティングや被写体のセッティングが難しくなる。
※私の感覚だと、5mmを切ると厳しい。
基本的に倍率が高くなるほど短くなるが、
LWD(ロングワーキングディスタンス)
SLWD(スーパーロングワーキングディスタンス)
といった表記のあるレンズは通常よりワーキングディスタンスが長くなるので使いやすい。
⑦同焦点距離
対物レンズの付け根から被写体までの距離のこと。
これが同じレンズを使っているのであれば、
顕微鏡のレボルバーを回転させたときにピントを合わせなおす必要がない。
カメラに直接対物レンズを取り付ける場合は一見無関係の数値だが、
この数値から対物レンズの物理的な長さを引くことでワーキングディスタンスを計算することができる。
⑧カバーガラス厚
鏡筒長表記(①)のスラッシュの後。
ここに 0 や - ではなく 0.17 等の数字が入っている場合、
その対物レンズは指定された厚さのカバーガラス越しに対象を観察する前提で設計されている。
撮影に使う場合はカバーガラスを使わないので、0 や - のものを使うのが無難。
とはいえ、低倍率だったり開口数が低かったりする場合はそんなに気にする必要はない。
⑨撮影に向く対物レンズ
顕微鏡の対物レンズはカメラに直接取り付けて使うことを想定していない。
よって「本来の使い方で高性能なレンズ」が「綺麗な写真が撮れるレンズ」であるとは限らない。
数千円で買えるレンズが撮影用として高性能だったり、
高額なレンズが撮影用としてはダメダメだったり、というのはままあること。
見分け方は特になさそうなので、確かめるためには実際に試すことが必要。
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